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今回のコンクールはコロナ感染症による活動の制限からようやく解放され、 |
出場者の皆さんを応援する多くの方が集まって下さった会場の熱い雰囲気の |
中で、それぞれがこれまで積み重ねてきた練習の成果を存分に発揮した、素晴 |
らしい演奏を聴くことができました。 |
演奏するときにはもちろん誰でも「弾く」ということに集中しますが、それと同時に |
「聴く」ということにも集中しなくてはなりません。なれない楽器で演奏し、なれない |
大きな会場で演奏する時、緊張し、鍵盤やペダルの感覚、出てくる音、会場に響く |
音など、家で練習している時とは様々なことが大きく異なり、誰しも多少の戸惑いを |
覚えると思います。 |
普段の練習でももちろんそうなのですが、特にこのように普段と違った環境で |
演奏する場合、この「聴く」という事が一段と重要になってきます。 |
技術的な課題や問題を克服しようとする時、私たちは明確な目標を設定して |
努力し、やがて課題や問題をクリアできた時には間違いなく達成感を得ることが |
できます。つまりこの作業はある意味では取り組みやすい事ということになり |
ますが、「聴く」こと、「聴く力」を育むということは、このように目標を定める |
ことができず達成感もなかなか得られないことから、「弾く」ことよりもずっと |
難しいことだと言えるでしょう。 |
私たちは意見や意思を人に伝えようとする時、言葉や文字を使って説明しますが、 |
ピアノの演奏は音だけで曲に対する考えや想いを聴き手に伝えなければなりません。 |
自分の奏でる音や音楽を客観的に聴くことで、皆さんの音楽のすばらしさを、聴き手 |
の皆さんにより正確に伝えることができるようになると思います。「どう弾いたか」 |
ではなく「どう聴こえているか」ということを常に意識して、日ごろから練習に取り |
組んでみてください。いつかまた一段と成長された皆さんの演奏を聴く機会が訪れる |
ことを楽しみにしております。 |
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大瀧 郁彦 |
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